新しい毛布

 

布団を顔に近づけて初めて、

匂いでそれが新品であることに気づいた。

 

そういえば歯ブラシもシャンプーも

わたし用の新しいものが用意してあった。

 

 

 

父親の顔は最後10ヶ月前に会った時より随分と老けこんでいて

目頭付近から続くシワが緩やかに頬へと伸びていた。

アルコールに飲まれ妻に見捨てられ、学費を払っている子供達との連絡も数えるほどしかないような、そんな彼の生活がそのままそこに刻み込まれていた。

 

 

依存症を報告しているために会社の同僚とも飲めず、知らぬ土地で1人いる彼のことを慰めるのが、また酒になってしまうのは想像するに容易かった。

 

 

 

 

 

きっと明日の朝エレベーターホールで彼は、

むかしわたしを抱き上げたのと同じ手でわたしにハグして前回と同じように「またおいで」と言うに違いなかった。

そのあと、私がどうするかというと、毛布に残った涙の跡がすっかり消えるように時間をかけて、ありがとうとまた来るねを何度も繰り返すのだ。